そよそよとそよぐ風の中、ザワザワした教室の外を見ながら
食べもしないのにお昼ご飯を机の上に置いてずっとあいつのことを考えていた。
風がゆっくり吹く度に、あいつの顔が鮮明になる。
今まで見たことのない
きっと、あいつの親でさえ見たことないだろうと思うくらいの
風の便り。
正直言ってドキドキした。
5時間目の授業が受けられないと思った。
あいつの顔なんて、まともに見れないと思った。
キーンコーンカーンコーン――――・・・
5時間目。
友達どおしで仲良くお弁当を食べていた人が戻ってきたり
机を囲んで喋っていた他のクラスの子達が自分の教室に戻って行ったり
廊下で立ち話していた人たちが少しづつ教室に収まっていく。
私は変わらずに1時間目から、立ちもせずにずっと同じ席同じ場所。
そう言えば、まだ一言も言葉を発してないなぁ。
家でも喋らないし、私は一体、いつ話しているのか。自分で自分が不思議だ。
先生が来た。
出席を取っている。こんな時でさえ、私は返事さえもしないのだ。
「野村ぁ」
あいつだ。あいつの名字。
右を向くと前の授業で配られたプリントが机の上に無造作に置かれていて、風でフラフラと揺れている。
もう少しで机から古びた床に落ちてしまいそうだ。
そのプリントには何も書かれていない。そしてあいつもいなかった。
結局1時間だけ出て帰ってしまったのだろうか・・・。
悲しいようなホッとしたような。
あいつがいると何故だか自分の気持ちが複雑になる。
皆もホっとしたのかいつものように教室が少しざわつく。
06>>>
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