ずっとソッポを向いたまま、いつもより機嫌の良い顔を風に見せながら

ひたすら授業も受けず眠ったフリをしていた。

あいつはMDウォークマンをものすごい大音量で聞くこともなくなり

皆も少しづつ、普通のいつもの生活に戻っていってた。

あいつがいても皆普通にしてられるじゃない。

あいつは寝ることもなく、騒ぐわけでもなく、迷惑をかけるわけでもなく、ただ黙々と授業を聞いていた。

2時間目まで私はずっとソッポを向いて眠ってしまいそうになった時のこと。



「田宮さん?」



突然呼ばれた。

すぐに起き上がり右を向いた。

あいつが私にまた声をかけてきたのだ。



「次、数学じゃん?教科書ないんだ。見せて」



とあいつは言い、私の方へ机を寄せてきた。

もうどうしようもなくパニックだ、避けるにも避けられないし断る理由もない。

心臓が今にも張り裂けそうで、キュンとしている。

恋をしている。あいつが私は好きなんだ。

断る理由と言えば、そんなもんだろう。

でもそんなこと絶対に言えず、死んでも言えず、ただアタフタして

ただ首を縦に少しだけ振って、あまり目を合わせないようにした。

好きだとバレるんじゃないかって思ったから。



「また、右が真っ赤 笑」



あいつにまた話かけられた。なんだこの空間は。何が何だかわからず

ただただ首を縦に振るだけで、一つも良いことなんて言えやしない。

何か話したくても頭の中は真っ白で、つまらない話さえも浮かんで来ない。

先生が来た。救いだ!私は先生の方を向いてあいつを見ないようにした。



「田宮」



「・・・・・・」



「野村」



「はぁーい」



「珍しいな、お前がちゃんと来るなんて」



「今日からはちゃんと来るから」



あいつさえもちゃんと返事をする。

いつから返事をしなくなったのか。1度言わないと私の中ではもう言えなくなるのだ。

それが何日も続くともっと言えなくなって、もっともっと言えなくなる。



先生の話なんて聞いてない。あいつがちゃんと勉強していても

こんなに近くに、隣にいるだけで、ソッチばっかり気になって仕方ない。

あいつはこんな時でも普段のありままの自分でいて

また好きになってしまいそうになった。またドキドキした。

50分のドキドキ。

確かに私はあいつが好き。あいつは誰が好きなんだろうか。少し気になった。

でもそんなことは私の気持ちの方が勝っていて、すぐに忘れてしまうことだった。

やっと授業が終わった。



「ありがとう、」



そう言うとあいつはまた自分の席に机を戻し、どこかへ行ってしまった。

ホっと一息ついた。この間、ずっと私は緊張していたのだ。

沢山沢山空気を吸った。深呼吸だって何回やったかわからない。

数学の教科書。これがまた思い出の1冊。。。

なんて勝手に思い出にしちゃう所が、恥ずかしい。

あいつがせっかくあんなに私に話かけてくれたのに、何も言えなかった。

すごく後悔した。

ただ首を横か縦に振ることしかできない自分が嫌になった。

今度こんな場面に遭遇したら、その時はちゃんと話をしよう。



うん、、、きっと。





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