耳を疑った。

誰が言ったのかと思った。

思わず左を向いていた顔を右に向けて起き上がった。

あいつがコチラを見ている。



「お前、右が真っ赤だぞ」



その時ベルが鳴った。

神の救いかのように、皆が教室をバタバタと走り出る。

こんな重い教室にいたくないからだ。

あいつも立ち上がり、教室を出て行った。

私は1人で呆然と座りつくし、ビックリしたのか怖かったのかもう何がなんだかわからない一瞬が起きた。

右側の頬をずっと机に引っ付けていたせいで、言われたとおり真っ赤だった。

それよりも何よりもあいつのことだ。

信じられなかった。私には。皆には聞こえなかったのだろうか。

あんなに悪いのに、噂ではヤクザだという噂まで立っているあのあいつが。。。

あんなにキレイな顔をしていた。

ほんの一瞬だった。でもハッキリと覚えている。忘れられないくらい、キレイな瞳をしていた。

皆よりずっとキレイな、純粋でステキな瞳。あの目はきっと忘れないだろう。これからも。そう思った。

何でも新しいものは吸収してしまいそうな、あの目にすこし微笑んだ顔。

私達は18になるのだ。

怒ってるように見えるけど優しい微笑んだ顔は絶対に出せない。

お昼なんてとてもじゃないけど食べられなかった。





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