あいつはまだ隣にいる。

私はまだ風に顔を見せている。



「この気持ちの良い風とももうお別れなんだなぁ・・・」



あいつはそう言った。

そんな軽いもんなの?そうだよ。そうだよね。

私が好きだってこと知らないんだから、辞めちゃうくらい、あいつにはどってことないよね。

これからもっと仲良くなれると思ってた。

ひょっとしたらって少し期待したりもした。

いつも私の前では笑ってくれてた。

私に気を使わず、いつでも話しかけてくれた。

全部がもう、もう思い出になっちゃうんだね。



あいつとは報われない恋だと、それでもいいから好きだって思っていたけど

いざいなくなると思うとやっぱり・・・・涙しか出てこない。

どうしようか。何しようか。こんな時くらい勇気出せよ、自分。

でもできない、できない、できない。

風が吹く。そんなことはお構いなしに風は吹く。とても切ない。

そんなこと思っていたらあっという間に授業が終わっちゃって、いつの間にか放課後で

あいつはいつものように普通にいなくなって。

私はずっとソッポを向いたままで。

もう会えないかもしれないのに、いつものように話もせずに

真っ赤に燃えた黄色く明るく光っていた太陽は、いつしか赤く赤く夕日に変わっていってた。

私の涙も枯れてしまうくらい泣いたのか、何も頬に落ちるものはなかった。

このまま本当に終わってしまうんだろうか。



いつの間にか完全下校の時間になって、私の目はうつろで、トボトボと廊下を

かかとだけ踏んだ上履きの音すらしないくらい足を引きずって歩いていた。

卒業式までいてくれるのは当然だと思っていたから

裏切られたようなショックで、悲しくて泣き崩れたくて。でももう泣けなくて。

これからどうしようか・・・・・。







ガラガラガラ―――――――――・・・



「おっ、どうしたんだよ。そんな顔して。」



「・・・・・・・・・!!!!」



「今日せっかく家帰ったのに、退学届け出すの忘れててさ、それで慌てて来たんだよ」



「そう・・・・・」



「何かあったのか?」



「・・・・・・・」



「あっ・・・あのさ、ずっと言おうと思ってたんだけど・・・今まで・・・・ありがとな」



「え・・・・」



「仲良くしてくれて。嬉しかったよ。ありがとな」



「私も・・・・・・野村君と仲良くなれて良かった」



「じゃぁ・・・・・行くわ俺」



「うん、」



「それと田宮、最後に。」

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「お前、先生から名前呼ばれたらちゃんと返事しろよなっ」





そう言うとあいつはあの時の出会った時のように運動靴のまま廊下を走ってそのまま外へ出て行った。

最後の最後に会えたんだ。

ちゃんと「野村君」って言えた。「ありがとう」って言ってくれた。

最後の最後まで、私に笑ってくれた。

私は嬉しくて職員室の前で立ったまま泣いてしまった。

好きだとは言えなかったけど、言わないままでも辛くないよ。

あいつを好きでいて良かった。あいつのおかげで自分が変われて良かった。

出席の時に変事しないこと、気にかけてくれていた。

ちゃんと私のこと、見ていてくれていた。

私にとってこんなに嬉しいことはない。



私はあいつが大好きです。










「はい出席取るぞぉーーー」



「秋田ぁ、井上ぇ、神林ぃ・・・・・・・・・・」



「田宮ぁ」



「はいっ」





[ END ]










* * *  あ と が き  * * *

テキストや詩にして表現してきた自分のコトバを、初めて小説にしてみました。

きっと今しかこんなコトバなんて浮かばないだろうし

好きな人がいたから書けた小説です。

最後、なんだかありきたりでゴメンなさい;

あと2つくらい終わりはあったんですけど、結局こんな簡単なのになっちゃいました。

また長くなっちゃうかもしれないけど

書きたいと考えているので、その時はまたゆっくり読んで見て下さい。

ありがとうございました。



2004,04,05 / 切ない分だけ風が吹く 01〜20 話



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